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診療科・部門

膵がんおよびその他の膵腫瘍



膵臓について

膵臓は、胃の裏側にある約15cm長の細長い扁平な臓器で、その右側を十二指腸が取り囲むように位置しています。膵臓の右側は厚く(約3cm)、「頭部」と呼ばれており、左側へいくにしたがい薄くなり(約2cm)、「体部」「尾部」という呼び方をします。
また膵臓の中央を縦断する形で「主膵管」という、膵液を十二指腸に流す管が通っています。

膵臓のはたらきは大きく分けて以下の2つがあります。
内分泌 血糖をコントロールする「インスリン」「グルカゴン」などのホルモンを産生・分泌します。
外分泌 多くの消化酵素(アミラーゼ、トリプシン、リパーゼ、など)を含む「膵液」を産生し、主膵管を通して十二指腸へ分泌します。

膵がんについて

膵臓にできる癌を「膵がん」と呼びますが、大きく分けて以下の3つに分けられます。
浸潤性膵管がん 膵管上皮(膵管の内側の細胞)から発生するがんで最も多いタイプ。
腺房細胞がん 消化酵素を作る「腺房細胞」から発生するがんで、比較的まれ。
粘液産生膵がん 粘液を多く産生する膵管内腫瘍ががん化したもの。早期の予後はよいが、浸潤すると予後は浸潤性膵管がんと同様。

膵がんの進行の仕方

がんの進行は大きく分けて、局所進行(がんの発生した場所)と領域リンパ節転移(膵臓周辺のリンパ節への転移)、遠隔転移(離れた臓器への転移)、播種(がんから直接周囲組織に細胞がこぼれること)の4つに分類されます。膵がんで最も多い浸潤性膵管がんの進行の仕方を以下に示します。
① 局所進行
浸潤性膵管がんは膵管の一番内側の上皮細胞から発生します。上皮細胞にできたがんは、膵管の内側に沿って水平方向に広がったり、上皮から膵管の壁の外側に向かって進行していき、膵管の周囲の組織に浸潤します。膵頭部に発生した場合、高率に膵管の近くの膵内を通る胆管に浸潤し、黄疸の原因となります。
さらに膵外に広がった場合には、周囲の臓器(十二指腸、胃、結腸、血管:門脈や肝動脈、上腸管膜動脈、脾動静脈など、神経など)へ容易に食い込んでいきます。
また膵管がんでは膵周囲(多くは背側)の神経線維に沿って癌が伸びていくような場合が多く、これを「神経浸潤」と呼びます。この浸潤により、肉眼的にはわからない範囲までがんが広がっていることがよく見られます。

② 領域リンパ節転移
リンパ管にがん細胞が侵入し、リンパの流れに沿ってリンパ節に転移をしていきます。がんの周辺のリンパ節は手術で腫瘍と一括して切除が可能であり、「領域リンパ節」と呼ばれていますが、ある程度離れたリンパ節は次の「遠隔転移」と同じ扱いとなります。

③ 遠隔転移(離れた臓器への転移)
遠隔転移には大きく分けて以下の2つのルートがあります。
遠隔リンパ節転移 リンパ液の流れに乗ってがんの周辺から遠くのリンパ節へと広がっていきます。
血行性転移 血液に乗って他の臓器に転移します。膵管がんの場合、最も多いのは肝臓への転移です。そのほか、肺やその他の臓器へ転移することがあります。
④播種
膵から発生したがんが外側に進行して、膵外へ達し、そこからこぼれて癌細胞が腹腔内へ散らばることです。

膵がんの病期分類

各種のがんは、「癌取扱い規約」によって病期(進行度)が決められています。膵がんは「膵癌取扱い規約」内で病期がI~IVに分けられています。
進行度は、手術前、手術時の肉眼所見、手術後の病理検査所見(摘出標本の組織を顕微鏡で見た所見)の3段階でそれぞれ判断されますが、最終的には病理検査所見が 最も重要です。
Stage I がんの広がりが膵内にとどまり、リンパ節や他の臓器への転移、播種などが認められない。
2㎝未満がIA、2㎝以上がIB。
Stage II がんの広がりが膵外に及んでも、周囲の重要な動脈(腹腔動脈、上腸間膜動脈)に浸潤がない。
近傍のリンパ節に転移がないものがIIA、転移があるものがIIB。
Stage III がんが膵周囲の重要な動脈(腹腔動脈、上腸間膜動脈)に浸潤している。
Stage IV がんが離れた臓器への転移あり。

膵がんの症状

全身倦怠感、食欲不振、上腹部痛、背部痛などが見られますが、初期の段階では症状がはっきりしないことがほとんどです。
ある程度がんが大きくなると、胆管に浸潤して胆管の内腔が狭くなり、胆汁の流れが滞ってその成分が全身に蓄積し、皮膚や眼球結膜などが黄色くなる「閉塞性黄疸」や、発熱、体重減少が出てきます。また、糖尿病が発症したり、悪化したりすることがあります。

膵がんの診断

膵がんが疑われた場合、以下の検査を施行します。ただし、発症時にはほとんどの患者さんがStage II以上であることが多く、がんであるかどうかと、病巣の広がりを並行して調べることがほとんどです。
採血 腫瘍マーカー(CEA、CA19-9、DUPAN2、SPAN-1など)
画像検査 腹部超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査(MRCP)等
内視鏡を用いた検査 経内視鏡的胆道造影(ERCP)、経内視鏡的膵管鏡、経内視鏡的膵管内超音波(IDUS)等

当科での膵がんに対する治療

がんの治療には、一般的に
  1. 外科的切除(手術)
  2. 抗がん剤による治療(化学療法)
  3. 放射線治療
の3つがあります。

膵がんの場合、化学療法や放射線治療単独の治療のみでは根治的治療(完全にがんを治すことを意図した治療)は難しいとされており、外科的切除を中心とした治療を考えます。

当科では膵がんに対する根治療法の中心である外科的切除を積極的に行っており、全身状態の評価結果から、安全に手術が完遂できると判断した場合、根治切除を目指して必要十分な切除・再建を施行します。
膵がんは、その位置や伸展形式から、以下のごとく術式が選択されます。
膵頭部がん 膵頭十二指腸切除
膵頭部および十二指腸と胃の一部、胆嚢、胆管、周囲のリンパ節を同時に切除、再建します
膵体部、尾部がん 膵体尾部切除
膵の体部、尾部、脾臓、周囲のリンパ節を同時に切除します
膵頭部~膵尾部まで広がるがん 膵全摘
膵全部と十二指腸、脾臓、周囲のリンパ節を同時に切除、再建します
また、血管に浸潤がある場合には上記に加えてそれらの合併切除→再建も必要になります。
これらの手術は比較的難易度が高く、合併症の多い手術として知られていましたが、現在では安全性が高まり、重篤な合併症は、徐々に減少しています。当科は、2011年から日本肝胆膵外科学会で発足した高度技能専門医制度のビデオ審査に合格した専門医が常勤しており、肝臓、胆道、膵臓の難易度の高い手術を重篤な合併症なく安全に施行できています。
切除の際には、術中に病理検査を施行して(術中迅速病理診断)、がんの取り残しのないように努めます。

また、切除した病巣の広がりを検討し、完全切除できていても、術後に化学療法や放射線療法を追加することもしばしばあります。
また、以前は切除→化学療法または放射線療法、の順に治療するのが一般的でしたが、2018年頃から、動脈や門脈などの重要な血管に広範囲に接した、再発率の高い「切除境界領域」膵管がんに対して、抗がん剤や抗がん剤+放射線療法→その反応を評価してから手術という「術前化学(放射線)療法」が一般的になりつつあります。

【膵頭十二指腸切除術後のイメージ】

その他の膵の腫瘍について

その他の膵の腫瘍にはいろいろな種類がありますが、ここでは膵神経内分泌腫瘍(PNEN)、充実性偽乳頭腫瘍(SPN)、漿液性のう胞腫瘍(SCN)について簡単に説明します。
【膵神経内分泌腫瘍:PNEN】 
膵神経内分泌腫瘍は、インスリンやグルカゴン(血糖を調節するホルモン)などを分泌する細胞から発生する腫瘍です。比較的まれで、10万人に約3人程度とされています。症状は、過剰分泌されるホルモンによる症状(高血糖、低血糖、消化性潰瘍、下痢など)がみられることがありますが、 最近はまったくホルモン分泌のないものも多く発見されています。大部分が悪性度は低いのですが、特にホルモン分泌のないもので無症状に進行し、発見時にはリンパ節転移や肝転移を起こしているケースもあります。治療は、膵臓とその周囲に限局しているものに対して外科的切除を行います。また2019年に日本で初めての治療ガイドラインが作成され、たとえリンパ節や肝臓に転移などを伴っていても、外科的切除、ホルモン剤・抗がん剤の全身投与などで、ある程度の治療成績が得られることが分かっています。当科でも、発見時に遠隔転移を伴いながら、上記の治療により長期生存が得られている患者さんがいます。もし他施設で診断が下されても、あきらめてしまわずに、一度ご相談ください。
【充実性偽乳頭状腫瘍:SPN】
20歳~30歳台の比較的若年の女性に多く、膵体尾部に発生しやすい、比較的まれな膵腫瘍です。特に症状がなく経過するため、腫瘍が小さいうちは偶然発見されるケースがほとんどです。5㎝以上のSPNは悪性とされており、治療は切除が推奨されています。
【漿液性のう胞腫瘍:SCN】
ほとんどが良性であり、そのため確定診断ができれば経過を見てよい腫瘍ですが、他の嚢胞性腫瘍との見分けが難しいケースが多く、切除後に確定診断されることも実際には多い腫瘍です。また、大きくなると周囲の臓器に炎症性に食い込んだり、腫瘍内に出血したりすることがあり、その場合にも外科切除が必要となることがあります。4cmを超えると、稀ですが悪性化しやすいという報告もあり、4cmを超えるような腫瘍は手術をお勧めしています。
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