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診療科・部門

コラム②「浜松医療センターにおける亜鉛診療」


コラム②では当院における亜鉛啓発活動について述べます。

「亜鉛欠乏症チェック表」について

「亜鉛欠乏症チェック表」(図3)ですが、これは、医療従事者が患者さんの亜鉛欠乏症の可能性が高いかどうか判断のために作りました。是非、このチェック表を使ってみてください。この表は、【指針】【Yokokawa論文】【副作用マニュアル】を参考に作られています、
以下、使い方の説明をします。

亜鉛欠乏症チェック表(図3)

まず、「血清亜鉛値」と「症状・病態」です。この2つは四角でくくってありますが、診断に必要な項目です。今回は、亜鉛の採血をするかどうかの判断で使用しますので、とりあえず「血清亜鉛値」は空白になります。「症状・病態」が一つでもあれば、亜鉛欠乏症の可能性があり、そういった方には亜鉛の採血をお勧めします。「症状・病態」については、以前お示しした「亜鉛欠乏症の症状」を参考にしてください。

次に、「疫学」について、主に【Yokokawa論文】を参考にしています。年齢が高齢になるほど、亜鉛欠乏症の可能性が高くなります。表の右端のオッズ比が1.3となっていますが、これは10歳毎に1.3倍ずつ亜鉛欠乏症の頻度が増すという意味です。ご高齢になるほど亜鉛欠乏症が多くなります。また、BMI(体重(kg)÷身長(m)2)で、ご自身のBMIを計算してください。BMIが25未満の方は25以上の方の1.44倍亜鉛欠乏症の頻度が増えます。また、入院中の方、最近まで入院していたという方は、入院していない方の3.37倍亜鉛欠乏症の可能性があります。妊娠している方、授乳中の方は亜鉛の必要量が増えます。そして、何か手術を予定している方も、亜鉛欠乏症だと、合併症で入院期間が長くなる可能性もあるので、採血をお勧めします。

「疾患」について

まず、太字の慢性腎臓病・炎症性腸疾患・慢性肝疾患・糖尿病の四つは【指針】で、亜鉛欠乏の症状が無くても亜鉛補充を検討してもいいことが記されています。これらの疾患にかかっている方は、主治医の先生と採血の相談をしてみてください。また、以下の疾患については【Yokokawa論文】で、たとえば、「肺炎」(誤嚥性)にかかった方は、かかっていない方の2.96倍亜鉛欠乏症が多いということです。ご自分のかかっている疾患があればチェックしてください。

「処方」も【Yokokawa論文】から、たとえば、「スピロノラクトン」を内服している方は、内服していない方の2.52倍亜鉛欠乏症が多いということです。ご自分の内服しているお薬あればチェックしてください。また、添付の【副作用マニュアル】には亜鉛欠乏症を起こす可能性のあるお薬が、添付文書に口腔内苦みの記載がある薬剤・味覚障害の記載がある薬剤・味覚異常の記載のある薬剤が記載されております。合計450種ほどが記載されています。一般名アイウエオ順に記載されていますので、是非、ご自身の内服がそれに該当するかどうかご確認ください。誤解してもらいたくないのですが、ご自身の内服しているお薬が、添付文書で、「亜鉛欠乏症の原因となる可能性がある」といった記載があっても、必ず、亜鉛欠乏になるとは限りませんし、そのお薬を中止することを示しているのではありません。中止や変更がきかない「亜鉛欠乏症の原因となる可能性がある」薬もあります。その時は、亜鉛採血をして、亜鉛欠乏が実際にあるかどうかを確認し、もし、亜鉛欠乏症があれば、亜鉛補充薬を併用して内服を継続することが大事です。

「症状・病態」が一つでもあれば、亜鉛欠乏症の可能性がありますので、亜鉛採血をお勧めいたします。また、「疫学」「疾患」「処方」については、数がいくつ以上というものはありませんが、いくつかチェックが入り、【副作用マニュアル】で亜鉛欠乏症を来す可能性があるお薬があれば、是非、亜鉛採血をしてみてください。

症例提示

症例提示をいたします。(図4)
まず、「亜鉛欠乏症チェック表」で亜鉛欠乏症の可能性があるかどうか調査しました。
60歳代 男性 身長164cm 体重60.3kg BMI 23.8 です。
「症状・疾患」の項目では、「最近、毛が薄くなってきたね」と家族に言われ、「皮膚炎・脱毛」にチェック。
「疫学」ではBMI 23.8で、25未満なのでチェック。
「処方」では抗血栓薬を内服しているので、チェック。
「疾患」では高血圧症をチェック。
【副作用マニュアル】で、内服を調べると、タケキャブ・アトルバスタチン・エゼチニブ・アムロジン・バイアスピリンが亜鉛欠乏症を起こす可能性があると該当しました。実は本コラムの作者です。
「亜鉛欠乏症チェック表」を完成させ、亜鉛採血をしてみると。
血清亜鉛値が66㎍/dL(正常範囲80~130㎍/dL)と潜在性亜鉛欠乏症でした。

症例掲示(図4)

血清亜鉛値の推移

今まで、亜鉛のサプリメント14㎎を毎日飲んでいましたが、2024年11月が66㎍/dLで、2025年の9月まで低値が継続し、2025年9月16日からヒスチジン亜鉛(ジンタス)を1日量100mgで開始しました。すると、1か月後の検査で116㎍/dLと上昇(正常範囲80~130㎍/dL)。ジンタスを1日50mgに減量して、2025年12月に採血すると99㎍/dLと正常範囲でした。2026年3月の採血でも90㎍/dLと正常範囲でした。現在も、ジンタス1日50mgの内服を継続しています。さらに、お酒を飲んだ時、ジムで運動した時、疲れているときは亜鉛消費量が多くなるため、サプリメント14mgを適宜飲んでいます。

血清亜鉛値の推移(図5)

ヒスチジン亜鉛(ジンタス)の内服を開始して半年がたちますが、現在の状況として、坂道を歩いても以前より疲れなくなった、風邪をひかなくなった、指先のカサカサや、背中の痒みを感じなくなった。お酒に少しだけ強くなった(飲んで帰っても、身支度をちゃんとしてから眠るようになり、家族に対してもいい効果が出ている)。2026年の1月からは病院の中ではエレベータを使わず、階段を歩いて移動するようになりました。精神的にもイライラすることがほとんどなく、色々と、新しい考えが出て、それを、実践できるようになった等です。私は、血清亜鉛値のコントロールが良くなり、元気になり、幸せな(亜鉛)生活を送っております。このことを、病院のホームページで皆様に伝え、亜鉛を気にして、必要があれば内服をしていただければと考えています。皆で亜鉛を気にすれば、皆で幸せになれると考えております。

当院内における4つの亜鉛啓発アプローチ

  1. 院内亜鉛勉強会の開催:医師・NST・検診部門などを対象に勉強会を実施し、多職種への知識を共有しました。
  2. 亜鉛検査を院内採血への移行:2024年8月より、血清亜鉛検査を外注から院内検査に切り替え、迅速な評価ができるようにしました。
  3. 亜鉛バッジの配布:勉強会参加者や亜鉛採血オーダ医へ提供し、院内での認知度向上と意識づけを図りました。(院内に、このバッジ(図6)をつけている職員がいたら、ご気軽に亜鉛について質問してください)
  4. 2026年5月より当院ホームページで亜鉛に関するこのコラムを発信しております。皆さまが、亜鉛に興味を持っていただきましたら幸甚です。

バッチ(図6)

当院の亜鉛採血件数・亜鉛製剤処方数・科別オーダー

当院の亜鉛検査件数を示します、オレンジ色は外来患者・灰色は入院患者・青色はその合計数です。
それまで、70件/月だったものが、2024年8月に外注から院内採血とし(採血当日に結果が判明)、検査件数が増加し、2026年5月にホームページでコラムを開始したところ、さらに件数が増え400件近くとなりました。(図7)

亜鉛採血件数(図7)

亜鉛薬処方件数(図8)

亜鉛製剤の処方件数ですが、これも採血件数同様に30件から200件と増加しています。(図8)
科別の採血オーダーですが、様々な科の先生が亜鉛採血していることがわかると思います。(図9)

科別亜鉛採血オーダー数(図9)

当院を受診されている皆様へ

  • 当院では、「亜鉛」の検査を院内で行っており、検査当日に結果がわかります。
  • 「亜鉛欠乏症」に対する専門の科は特にありません。色々な疾患や病態で「亜鉛欠乏」になりますので、気になる方は、まず、ご自分のかかりつけの科でご相談ください。
  • 亜鉛欠乏症の診断がついたら、亜鉛治療薬はどの科でも処方が可能です。
  • どこにかかったらわからない方は、「総合診療内科」を受診してご相談ください。


      今回のコラムは
      1. 脇野修, 児玉浩子, 原貴史 他, 亜鉛欠乏症の診療指針2024. 日本臨床栄養治療学会雑誌46 : 224-374, 2024 文中では【指針】と表示します
      2. Yokokawa H, Morita Y, Hamada I, et al. Demographic and clinical characteristics with patients with zinc deficienct: analysis of a nationwide Japanese medical claims database. Scientic Reports.2024; 14 2791 文中では【Yokokawa論文】と表示します
      3. 重篤副作用マニュアル 薬物性味覚障害 平成23年3月(令和4年2月改定)厚生労働省 文中では【副作用マニュアル】と表示します
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