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ホーム >  診療科・部門 >  整形外科・下肢関節再建人工関節センター >  椎間板内酵素注入療法とは?

椎間板内酵素注入療法とは?


椎間板ヘルニアは椎間板の中心部にあるムコ多糖と呼ばれる物質を豊富に含んでいる髄核(ずいかく)と呼ばれる部分が椎間板から脱出し、下肢に伸びている神経を圧迫してしまうために下肢の痛みを起こす病気です。
椎間板内酵素注入療法とは、おしりや太もも、すね、ふくらはぎ、足といった下肢の痛みで困っており、腰椎椎間板ヘルニアと診断された成人の方に対して、椎間板の中にムコ多糖を分解する薬剤を注射する治療です。

腰の斜め後ろから、椎間板ヘルニアを起こした椎間板の中に薬を注射します。時間がたつと薬の効果でヘルニアが縮小して、下肢の痛みを軽くします。


Q1.酵素注入療法では、どのような薬を注射しますか?

A1.酵素注入療法では、ムコ多糖分解酵素であるコンドリアーゼという名前の薬剤を注射します。コンドリアーゼにより椎間板内のムコ多糖が分解されると、その保水能は弱まり、椎間板内圧が低くなります。その結果、椎間板ヘルニアによる神経根の圧迫が軽くなり、痛みが和らぎます。

Q2.酵素注入療法では、どのような方に効果がありますか?

A2.一般的には20歳から60歳代の方で、椎間板ヘルニアによる下肢痛で困っている場合に注射を行います。ただし注射の薬液が届きにくい経後縦靱帯脱出型、遊離脱出型の椎間板ヘルニアの場合は、薬の効果があまり期待できません。また椎間板ヘルニアが2ケ所ある場合や変形性脊椎症、腰椎すべり、脊柱管狭窄などのヘルニア以外の原因を合併する場合も、あまり効果が期待できません。その場合は他の治療法をお勧めします。

Q3.酵素注入療法では、どの位の期間で下肢の痛みが良くなりますか?

A3.早ければ1,2週間で下肢痛が良くなりますが、4-8週間かかる場合もあります。臨床試験のデータをみますと、下肢痛が半分以上良くなるのを治療成功とした場合は、注射後12週間で約70%の方が治療成功、良くなっています。下肢痛がとれる時期には個人差がありますので、この治療の効果を見極めるには、3ヶ月程度待つ必要があると考えます。

Q4.酵素注入療法では,完全に治るのはどのくらいの期間ですか?

A4. 椎間板ヘルニアが縮小し、下肢痛が消えれば、完全に治ったのかと言えるのか疑問があります。なぜなら注射により椎間板のムコ多糖が分解されることにより、椎間板が構造的に弱くなる可能性があるからです。また線維輪の亀裂などの椎間板の変性はコンドリアーゼの注射によって治ることはありません。そのため椎間板の負荷によりいったん縮小したヘルニアがまれに再発する危険があります。
注射前に可能であれば、日常生活や仕事の復帰は注射翌日から可能です。ただし注射した後1週間は腰に簡易固定帯をつけて、腰にかかる負担をなるべく避ける必要があります。またスポーツ、重量物の運搬など肉体労働や長時間の車の運転などは下肢の痛みがある期間は控えて、注射した後3週間以上たってから慎重に開始していただきます。

Q5.酵素注入療法では、副作用や危険性はありますか?

A5.椎間板のムコ多糖が分解されることにより,椎間板が構造的に弱くなり、腰痛やX線検査、MRI検査の異常が出現する可能性があります(臨床試験では約20%)。また下肢痛が増強する可能性もあります(4~5%)。さらに発疹や発熱、頭痛などのアレルギー症状が出現する可能性があります(2~3%)。このアレルギーのなかでも重篤なショックやアナフィラキシーや腰痛が出現した場合は早く治療する必要があるため、浜松医療センターでは1泊2日の入院で安心して酵素注入療法を受けていただいております。花粉症などのアレルギー体質の方や、健康食品としてコンドロイチン硫酸を服用されている方は危険性が高いです。


Q6.酵素注入療法の費用はどの位ですか?

A6.特に他の持病がなく、1泊2日の入院で酵素注入療法を受けた場合は、健康保険で3割負担の患者さんは約76,000円、1割負担では約26,000円の費用が必要です。(2020年7月1日現在)浜松医療センターでは酵素注入療法は健康保険の対象となるため、高額療養費制度等を申請し、所得に応じた一定額の還付が得られる場合があります。浜松医療センターの医療相談室で、個別に説明を聞くことができます。

Q7.酵素注入療法と神経ブロック注射との違いは?

A7.酵素注入療法では椎間板にコンドリアーゼを注射しますが、ブロック注射では神経周囲に麻酔薬やステロイド薬を入れます。そのためブロック注射は神経痛を直接和らげることができますが、椎間板ヘルニアは残ってしまうので、早く良くなる代わりに、薬の効果は長続きしないと考えます。一方で酵素注入療法は、直接神経痛を取ることはできませんが、椎間板ヘルニアを縮小させることができます。そのため良くなるのに時間がかかりますが、一度良くなるとブロック注射よりも効果が長続きすると考えられます。

Q8. 酵素注入療法と手術との違いは?

A8.手術では直接、椎間板ヘルニアを取り除くことができるため、酵素注入療法と比べて痛みをとる効果がより確実といえます。また20歳未満の若年者や高齢者、2ヵ所以上に椎間板ヘルニアがある場合や疼痛が強い場合は、コンドリアーゼ治療ではなく手術をおすすめしています。ただし手術の場合は、およそ1時間程度の全身麻酔と手術後に約4-7日間の入院が必要になりますので、治療に必要な入院期間は、酵素注入療法の方が短いです。